24秒バイオレーション

24秒で1ターン

パラミツ

この春、会社に中国出身の後輩ができた。

 

彼はよく喋る…本当によく喋る男だ。日本語でガンガン話しかけてくる。日本語はもっと上手くならないとダメだというが、十分話せているし、その積極性に本当に感心してしまう。積極性といえば聞こえは良いが、もはやそれを通り越してズケズケ言うくらいだ。「人事は仕事してない」「みんな忙しいフリをしているだけで忙しくないからブラックじゃない」など、オフィスで大きな声で言うからヒヤッとする反面、良いぞもっと言え!と面白がる自分もいる。というかそっちの自分ばかりいる。「『こころ』は流石の文章力だが『吾輩は猫である』は若い頃書いた、見るところがない」と夏目漱石にまでものを言う。勿論日本語で読んだらしくその優秀さに舌を巻く。今までお昼は決まって1人で考え事でもしながら食べていたが、何故か彼と毎日騒がしく食べるようになった。

 

その彼が美味しい果物があるから買いに行かないかと誘ってきたので、会社帰りに着いて行った。オフィス周りだがあまり通ったことのない入り組んだ路地を行き、ここは景色がよいと橋の上からスカイツリーを眺め、15分くらい歩いて(彼はやたら歩くのが早い、歩くテンポと話のテンポが似ていると思った)着いたのはアジア系のお店だった。日本に住んでいるアジア系向けに輸入品を取り扱ってるよくあるようなお店だった。思ってたのとちょっと違う見た目に一瞬躊躇したが、「これがうまい、騙されたと思って買ってみろ」と言われ、500g600円の冷凍パラミツを買った。新しい人に知らないところまで連れてってもらうのは楽しい。

 

ちょっと押しが強く積極的なタイプの人は、割と保守的で優柔不断タイプの自分にはありがたい存在だったりする。ちょろい客かもしれないが、そういう店員さんにあたると良い買い物ができる傾向にある。お昼休みにアウトドア用品店で買い物をしたら、距離感を詰めるのが速すぎるお姉さんがさっさと見繕ってくれてすぐ買うことになった。ゆっくり見ていってください接客ではなく、それでいいじゃん?接客だった。レジで「もうお昼食べたんですか?男の人って食べるの速いですよねハハハ」と軽く話してから店を出た。うーんコミュニケーションが上手だ、このお姉さん。

 

アジアの香り漂うパラミツは言うほど美味しくはなかった。(悪くはなかった。)少しずつ食べていくことになりそうだ。